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鋼の錬金術師テキストブログ。所謂「女性向け」という言葉をご存じない方、嫌悪感を持たれる方はご遠慮ください。現状ほぼ休止中。
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221Bに子どもが増えた。



ただでさえ見た目は大人、中身は12歳のフラットメイトに苦労をかけられっぱなしのジョンは、帰宅した当の探偵の腕の中を一瞥して言った。

「おかえりシャーロック。いますぐ戻って返して来い」
「ジョン、その発言はどうかと思う」

珍しく現実逃避を図ったらしい助手に、これまた珍しく落ち着いた探偵が言った。
だがジョンはそれどころではない。脳が状況を拒否したのは一瞬だったらしく、座っていたソファから立ち上がって彼の腕の中を確認し、自分の想像通りだったことを認めると、うろうろと部屋を歩き回ってから、もう一度シャーロックの腕の中を覗き込み、やはり自分の目がおかしくなったのではないことを確認し――頭を抱えた。

「ああシャーロック、まさか、君が……一体どこで攫ってきた!?」
「君の経験則では30代男性が赤ん坊を連れてきたら誘拐犯になるのか。興味深い人生だな」
「僕の経験則では一般的な30代の独身男の冷蔵庫に生首なんてないし暖炉の上に骸骨の友人もいないんだ」

君に常識なんて当てはまらないだろうとあっさり答える相棒の言に、探偵は微かに口端を持ち上げる。それに気づかないまま頭を抱えていたジョンはハッと顔を上げて言った。

「まさか赤ん坊で実験とか言い出すんじゃないだろうな!?」
「僕の子どもだという推測はないのか?」
「――え。君の子なの?」
「違う」
「だよな」

ありえないよな、としたり顔で頷くジョンをシャーロックは少々物言いたげな眼で見たが綺麗に無視される。
二人して視線を落とす。
赤ん坊はすべらかな肌で、大きな瞳は透き通るようなブルー。ふくふくとした頬が大変に愛らしく、そこにいるだけで周囲を和ませる空気を放っていたが、この男二人のフラットには非常に不釣合いだ。
紅葉よりも小さいのではと思える手がそっと伸びてシャーロックのコートの端を掴もうとする。何度か失敗して目的を達成した赤ん坊は、それはそれは嬉しそうに笑った。

「うあー」
「「…………」」

妙な沈黙に耐え切れなくなったのはジョンだった。

「――で?攫ったわけでも君の子でもないならどうしたんだ。ヤードから預かって……いやグレッグたちがそんな危険を冒すわけがないな。ハドソンさん……もさっき出かけてた。誰が君に赤ん坊を預けるなんて無謀な真似を?」
「彼女の名前は知らない。だがこの赤ん坊はメアリというそうだ。もうすぐ1歳」
「なんで知ってる」
「書いてあった」
「……?何に」

視線で示され、ジョンが彼女が包まっている柔らかそうなおくるみに目を向けると、小さな手紙が挟み込まれていた。

「…………」

その手紙とシャーロックの顔を何度か行き来し、ジョンは嫌な想像に思い至った。もしや、これは。
ここにきてようやく、一見冷静にみえる探偵が動揺しているらしいことに気づく。ブルーグレイの瞳の奥は、腕の中にいる自分のエリア外の生き物に困惑している。

「ジョン。いつから此処は託児所になった?」
「――ジーザス!」




*************:
つづかない。
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管理人 柚 (雑記)

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