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鋼の錬金術師テキストブログ。所謂「女性向け」という言葉をご存じない方、嫌悪感を持たれる方はご遠慮ください。現状ほぼ休止中。
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6月祭りはこれにて終了
ひたすら自分だけが楽しいお祭りでしたが
楽しんでくださった方がいたら幸い

9にリバくさいの混じってます ご注意ください第4弾






8.何も見えない×雨天中止 / ハボロイ / dog and catのふたり / 100620


ざあざあと、雨が降る。

降り続く雨を窓から見ている私の後ろから、抑えきれないといった風にため息が聞こえた。
そして、さらにその後ろから、不思議そうな声。

「なにやってんスか、二人して空見ちゃって」
「ハボック」

雨続きの毎日で、明日の休みは久しぶりの晴れ。そう聞きつけたジャンがどこかへ出かけよう、とたいさを誘って。
たいさも乗り気でいたのだが、朝、私が起きたときにはすでにじめじめとした湿気を孕んだ雫が空から降り注いでいた。
どうやらジャンの聞いてきた予報は外れだったらしい。
さっきの残念そうなため息はたいさのものだ。

「この雨だ。今日は出かけられないだろう」
「あー…そうですね」
「……ずいぶん嬉しそうだな」
「え?」

確かに、雨だというのにジャンは妙に嬉しそうだ。

「拗ねんでくださいよ」
「誰も拗ねてなんていない」

いや、その態度を拗ねているというのだ、たいさ。
たいさは分かりやすい。ジャンも苦笑いしている。

「出かけられないのは残念ですけど。これであんたと一日二人っきりだなーと思ったらなんか嬉しくなっちゃって」
「……なんだそれは」

呆れきった声で窓を見るたいさは、ジャンを振り向こうとはしない。だからこそ、私からその表情はよく見えた。

おい、ジャン、私もいるぞ。

「ああ、悪い。ロイもいっしょな?」

にゃあ、と存在を主張すると近づいてきた大きな手で撫でられる。
ふと、拾われた日のことを思い出す。
あの日もこんな風に何も見えなくなるくらい雨が降っていて。
どんよりとした空に嫌気が差すころに、空色の目をしたジャンに会ったのだった。
そうして拾われて、いまも此処にいる。

「晴れでも雨でも。今日はあんたと一緒にいれますし。出かけるのは次にして今日は二人――とロイで。ゆっくりしましょうよ」
「……次も雨かもしれんぞ?」
「だったら合羽でも買って準備しときますよ。猫用もいっしょに」
「猫用…あるのか?」
「さあ、あるんじゃないですかね?」
「では犬用も必要だな」
「んなこというとあんたとロイの合羽おそろいにしますよ」
「それは怖い」

黒い目を細めてくすりと笑う。
機嫌の直ったらしい大きい方の黒猫を引き寄せて、ジャンがこちらに小さく目配せをよこした。


出来た猫である私は二人から視線を逸らして再び窓の外の少し弱くなった雨を見た。
このままいけば、夕方には晴れ間も覗いて、私とたいさが大好きなあの空色が見えるかもしれない。
その時を想像して、私はひとつ、ぱたり、しっぽを揺らした。






9.1日の終わり×おとぎ話 / ハボロイハボ / 100624


「知っているか?シンデレラは12時になると魔法が解けて元の灰かぶりに戻ってしまったそうだ」
「はあ。どうしたんスか、急に」
「ここに座れ」
「イエッサー」

報告のために入った執務室で。
誰でも小さいころに一度は聞くおとぎ話を持ち出されて、ハボックは首を傾げた。
指示通りに、何故か執務机でなくソファに座っていた上官の隣に腰掛けると、視線だけで続きを請う。

「愛しい王子と離れがたくなった彼女は時間ギリギリまで彼の傍にいて、最後には慌てるあまりにガラスの靴を落とすも、本来の姿は見られなかったわけだ」
「はい。そんでそのあと忘れられなかった王子が靴のサイズあわせにきて彼女を見つけてハッピーエンド。でしたよね?」
「ああ」
「それで、そのシンデレラがどうかしました?」
「――べつに。もうすぐ12時だなと思っただけだ」
「げ。すいませんね時間かかっちまって……」

黒尽くめのままだったハボックがやぶへび、と所在なさげに身を縮める。
その姿を眺めたマスタングが、一瞬ものいいたげに目を細めてから、つとめて静かな声で尋ねた。

「それで?首尾は」
「完了しました。その後の経過も上々です、サー」
「そうか」

司令部でも深夜になると人は減り、昼間の喧騒は遠のいて静寂な空間があたりを満たす。
今もふいにしんとした時間が訪れ、どちらともなく黙り込む。

静寂を破ったのは、チッというマスタングの舌打ちだった。

「え、うわっ…!」

不意に腕を思いっきり引っ張られてさすがのハボックも引っ張った張本人であるマスタングへと倒れこんだ。
抱きつくような体勢に、慌てて身を起こそうとするも、苛立った手に押し付けられるようにされて姿勢が崩れる。
必然的に上官の膝に頭を預けて見上げる状態になったハボックが戸惑って黒い瞳を見上げた。
上司部下の関係だけではないとはいえ、この場所でこんなことをする人ではないのに。

「あの…大佐?」
「煙草を吸う気にもならんほど疲れているのならさっさとそう言え」
「え」

そういえば、とハボックはそこでようやく自身が煙草を所持してすらいないことに気づいた。
そして、マスタングの不機嫌の理由にも。

「――俺、そんなヤバかったですか」
「今にも倒れこみそうだった」
「あれー……?」
「今日は終わったんだ。貸してやるから少し寝ろ」
「うわ大サービス。……あとから返せって言っても無理っス、から、ね…」

髪に静かに触れてくる手に反応してか、今までまったく感じなかった睡魔がハボックに襲いかかり、言い終えるが早いか寝息をたて始めたハボックを見て、ようやくマスタングも小さく息をついた。

そうして寝息がふたつに重なるころ、しんとした空気の中でカチリ、と時計が一日の終わりを告げた。





10.太陽の色×貸し借り / 手持ち無沙汰の~のハボロイ+エド / 100630


まじまじと。
久しぶりにやってきた最年少の国家錬金術師はやけにきらきらとして見えて。
穴の開くほど、という比喩が現実になるかというほどに私がまじまじと見ていると、心底気持ち悪そうな表情で鋼のが「あのさー、大佐」といった。

「そんなに見られると気持ち悪いんだけど」
「鋼のの髪は太陽のようだな」
「なっ……!」

ずしゃっと音を立てて鋼のが飛びのく。
何か、おかしなことを言っただろうか?

「思いっきり言ったじゃねえかよ!今!まさに!」
「本心からだったのだが」
「余計悪いわ!」

そういうのは女の人に言えよとぶつぶつと呟いて両腕をさすっている。
確かに、女性相手に言うような――つまり、口説き文句ととれるような台詞だったかもしれない、と振り返って気づく。

「だが、今日の鋼のの髪はやけに綺麗な色をしているように思うのだが」
「……大佐が暑さで頭おかしくなった…!!」
「君は寒そうだな」
「誰のせいだと思ってんだよ…!!見ろよこのトリハダ!!」
「おお」

じわじわと蒸し暑い空気が漂う執務室で、腕をまくって主張する鋼のはどうやら本気で寒気を感じたらしい。
汗ばむ陽気だというのに、よほど私の言動がまずかったのか。
だが彼のきらきらとした誘惑は今もそこに存在しており、私を呼ぶ。

「鋼の。髪に触っても?」
「……」

鋼のは胡散臭そうにこちらを見てから、呆れたようなため息をついて無言で顔を逸らした。
それを見た私は同意を得たものとして、彼の髪に触れる。
鋼のは珍しいことに、おとなしくされるがままだ。
太陽というよりは蜂蜜だな、と先ほどの自分に訂正を入れて。
蜂蜜色の前髪が私の指先でさらりと流れる。

「……今日はハボック少尉いねえのかよ」
「ハボック?あいつは出張中だ」
「ふーん。いつから?」
「一週間前だが」

きちんとまとめられた髪の毛の先はやけに痛んでいて、もったいないな、と思うも、それが彼らの旅路を物語っているようで愛しく思う。

「大佐ってさー」
「ん?」
「意外にガキだよな」
「君には言われたくないな」

きらきらした蜂蜜色は、だがどこか物足りなさも感じてしまう。
あれはもう少しだけ色あせていて蜂蜜ほどの甘さはない。

「あのな、大佐」
「なんだね」
「人の頭撫でまわしといて残念そうな顔するの、やめろよな」

ぴたり、と手が止まった。
――ことに気づいたのは鋼のが私の手をなんなく掴んで降ろさせたから。

私の腕を掴んだ鋼のは、目が合うとにやぁ、と笑った。

「なあ、大佐?」
「……悪い顔になっているぞ、鋼の」
「これ。貸しひとつ、だよな?」
「……さて。何のことだか」
「あー俺なんかものすごく今の大佐の行動しゃべりたい気分かもー」
「構わんさ。好きにすればいい」

私が鋼のを構い倒すことなどよくあることで、司令部の誰が驚くようなことでもない。
そして、たった今までの私の行動を知られてまずい人間など今此処には――

「そういえば、俺、さっき少尉見たぜ?」

にぃ、と猫のような笑みで面白そうに言う少年に、目を見開いた。

そしてほぼ同時に、部屋にノックの音が響いて扉が開く。

――どうしてこういうときだけ図ったように来るんだ、こいつは――

「マスタング大佐、ジャン・ハボック少尉ただいま戻りました…って、大将?来てたのか」
「うん、でももう帰るとこだから!またな少尉!」
「おー、またなー」

パシリとハイタッチを交わして去っていく。
最後に大佐、これ貸しだからな!と叫んでいく鋼のがやけに生き生きしていたように思うのは私の気のせいだ。
それより。

「……いつの間にそんなに仲良くなったんだおまえら」
「はい?」

一週間ぶりに会った部下はいつものようにひょいと覗き込んでくる。その口元には煙草。
そして青い目に――金色の、髪。
思わず目が吸い寄せられて固まった私に、太陽の色をしたそれが少し揺れた。

「大佐?どうしたんです?」
「……っなんでもない!」

手を伸ばしたくなる衝動を抑えるのには。
とてつもない努力が必要だった。

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管理人 柚 (雑記)

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