鋼の錬金術師テキストブログ。所謂「女性向け」という言葉をご存じない方、嫌悪感を持たれる方はご遠慮ください。現状ほぼ休止中。
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雨の日は好きじゃない。
濡れるし、動きも鈍くなる気がするし、何よりこのじめじめとした湿気がなんとなく気を重くさせる。
突然に降りだした雨を避けるものなどあるはずもなく、水の粒が落ちてくる灰色の空をぼんやりと見上げていた。
日も暮れかけ、雨雲が立ち込める薄闇の中。
電柱の隣にひっそりと静かに座り込む私にほとんどの人間は目もくれず、傘を手に足早に家路へと急いでいく。
中には私に気づくものもいたが、たいていはぼろぼろの身なりをした私に哀れみのこもった視線を投げかけて通り過ぎるか、あるいは見てはいけないものを見てしまったかのようにはっとして足を速めるかのどちらかだった。
寒いという感覚など疾うにない。
濡れるのは少し厄介だとぼんやり思ったが、いまさらだ、とも思った。
上を見ると厚みのある黒い雲がゆっくりと流れていく。
雨脚が強まって、道行く人間たちが何やら騒ぎながら駆け出していった。
――どれくらいたったろうか。
ぱしゃり、水の跳ねる音が目の前で止まった。
「うわ、ひでえなあ」
目の前に大きなブーツ。
軍靴、というのだと後で知った。
そのまま顔を上へ向けると、金の髪をした大きな男がいた。
傘を持っていないのか、私同様びしょ濡れだった。
街でたまに見る青い服をそいつも着ていたが、それも今は水滴をたっぷり含んでさらに色濃さを増していた。
「わざわざ雨に打たれて。何してんだ?」
雨宿りの場所なんていくらでもあるだろ、言いながら手を伸ばされる。
自分に触れた人肌の温度にあ、と思うより前に手が出てそいつが一瞬顔を歪めた。
「いて」
引っ掻いた男の手の甲にはすぐに赤いいろが滲んでくる。
見上げると、怪我した手を抑えた男は小さく笑った。
「あー大丈夫大丈夫、かすり傷だからそんな顔するなって」
……どんな顔をしているんだ、私は。
再び伸ばされる手からはまだ赤が流れていて、また手が出そうになったのを今度は顔を背けることで抑えたらしっかりと抱き上げられて、そこでようやく自分の体が微かに震えていることに気づいた。
なんだ、私は寒かったのか。
気づきたくなかったことを気づかされて呆然とする私の目の前に、見たくて見たくて仕方なかった青空のいろが広がって。
なあ、とそいつは言った。
「一人なら、一緒に来るか?」
……仕方ない。
その青いいろをもうちょっと見ていたくなったので、
行ってやってもいいぞ、という意味を込めて私はにゃあ、と一声鳴いた。
人間は、面白そうに笑ったようだった。
濡れるし、動きも鈍くなる気がするし、何よりこのじめじめとした湿気がなんとなく気を重くさせる。
突然に降りだした雨を避けるものなどあるはずもなく、水の粒が落ちてくる灰色の空をぼんやりと見上げていた。
日も暮れかけ、雨雲が立ち込める薄闇の中。
電柱の隣にひっそりと静かに座り込む私にほとんどの人間は目もくれず、傘を手に足早に家路へと急いでいく。
中には私に気づくものもいたが、たいていはぼろぼろの身なりをした私に哀れみのこもった視線を投げかけて通り過ぎるか、あるいは見てはいけないものを見てしまったかのようにはっとして足を速めるかのどちらかだった。
寒いという感覚など疾うにない。
濡れるのは少し厄介だとぼんやり思ったが、いまさらだ、とも思った。
上を見ると厚みのある黒い雲がゆっくりと流れていく。
雨脚が強まって、道行く人間たちが何やら騒ぎながら駆け出していった。
――どれくらいたったろうか。
ぱしゃり、水の跳ねる音が目の前で止まった。
「うわ、ひでえなあ」
目の前に大きなブーツ。
軍靴、というのだと後で知った。
そのまま顔を上へ向けると、金の髪をした大きな男がいた。
傘を持っていないのか、私同様びしょ濡れだった。
街でたまに見る青い服をそいつも着ていたが、それも今は水滴をたっぷり含んでさらに色濃さを増していた。
「わざわざ雨に打たれて。何してんだ?」
雨宿りの場所なんていくらでもあるだろ、言いながら手を伸ばされる。
自分に触れた人肌の温度にあ、と思うより前に手が出てそいつが一瞬顔を歪めた。
「いて」
引っ掻いた男の手の甲にはすぐに赤いいろが滲んでくる。
見上げると、怪我した手を抑えた男は小さく笑った。
「あー大丈夫大丈夫、かすり傷だからそんな顔するなって」
……どんな顔をしているんだ、私は。
再び伸ばされる手からはまだ赤が流れていて、また手が出そうになったのを今度は顔を背けることで抑えたらしっかりと抱き上げられて、そこでようやく自分の体が微かに震えていることに気づいた。
なんだ、私は寒かったのか。
気づきたくなかったことを気づかされて呆然とする私の目の前に、見たくて見たくて仕方なかった青空のいろが広がって。
なあ、とそいつは言った。
「一人なら、一緒に来るか?」
……仕方ない。
その青いいろをもうちょっと見ていたくなったので、
行ってやってもいいぞ、という意味を込めて私はにゃあ、と一声鳴いた。
人間は、面白そうに笑ったようだった。
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