鋼の錬金術師テキストブログ。所謂「女性向け」という言葉をご存じない方、嫌悪感を持たれる方はご遠慮ください。現状ほぼ休止中。
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探偵事務所には、嫌に浮かれた客と微妙な顔の主人がいた。
「アイツをあそこまで追い詰めるなんて、さすが名探偵のロイ・マスタング様だな!」
「……逃げられたことに変わりはない」
「いやいやー、うちのお偉方が自分の手柄のように吹聴してたぜー。情けないが初めて何も盗られなかったわけだ。これでしばらくヤツも姿を見せないだろ」
久しぶりに愛する家族のもとに帰れると写真を取り出して笑う刑事の親友を呆れた目で見て、ロイは机に頬杖をついた。
机の上に置かれた新聞には一面に、「怪盗、初の失態!警察の面目躍如!?」と大衆を煽る安っぽい文字が躍っている。
彼の泥棒は狙う日と場所を予告するというフザけた真似をしてくるものの、盗むターゲットに関しては知らせてこない。
それくらい分かるだろうということなのか、単なる愉快犯なのか。
今回もある男爵の屋敷が狙われ、ターゲットを定めきれない警察は全面警備をするハメになっていた。
そこから独自にターゲットを導き出し、奪いに現れた泥棒と対峙し、追うことができたのは確かにロイの功績だったが――あの場は本当に、偶然が導いたものだったのかが未だロイの中で疑念として渦巻いている。
それもこれも、あの泥棒のせいだ。
――あとひとつ。ほしいものがあるんです。
思った途端、唐突に頭に響いた声に、びくりと震えた。
「――ロイ?どうした?」
「……え?」
「何か気になることでもあったか?」
――俺は、それがどうしてもほしい。
「……いいや」
「そうか?何かあったんじゃ――」
「別に」
「本当だな?」
「ああ。しつこいぞ、ヒューズ」
「だったらいいんだけどよ」
肩をすくめて引き下がった男の目の奥にはまだ伺うような光が残っていたが、ロイはそれを無視して頷いた。
嘘は言っていない。自分はどうしてか、相手の顔すら覚えていない。
ただ、ことあるごとに思い起こされるだけ。
「そうだ。だいたいあんな……っ」
「あんな?」
ヒューズの訝しそうな視線に、つい声を荒げそうになったことに気づいたロイは俯くことでそれを抑える。
だが、握った拳が震えるのを止められない。
あの泥棒あの泥棒あの泥棒――――!!
心の中で盛大に罵倒するのは追い詰めた自分にフザけたことを言ってフザけたことをしていった相手。
あんなに至近距離まで近づいたのに捕まえられず、あまつさえあんなことをこの私に――
怒りなのか羞恥なのか分からない感情でくらくらした。
俯いて両手を握り締めたままいる姿のロイに、ヒューズの鋭い視線が投げられていることにも気づかずに。
「なあロイ。オマエ、やっぱり何か――」
「……殺す……」
「は?」
「あの泥棒、絶対俺がとっ捕まえてブチ殺してやる……!」
「おーい、ロイさーん??口調変わってるぜー?」
――俺は、あんたがほしい。
本当に愛しい人へと向けられたような声と青い目だけが脳裏に焼きついていて離れず、ロイは唇を噛み締めた。
***
『――どうだった?』
『ああ、オマエにしちゃ上出来だ。あんなモンだろ』
『マジで?ああよかった……』
『んなこといって、ブレダが一番不安がってたろ』
『あのなジャクリーン、コイツに腹芸させるのがどんだけ難しいと思ってんだ?』
『だから最初からオレの方が適役だって言ったじゃねえか』
『オマエは暴走しすぎるからもっとダメだ』
『暴走?』
『……自覚ねえのかよ』
『まーまージャクもブレダも。いいだろ、うまくいったんだから。あの絵はあの場所が一番いいと思うし』
『オマエが言うな』
『まぁいい。で、こっから本題だけどな、ジャン』
『は?本題?』
『盗ってこなくていいとはオレもブレダも言ったが――誰も、あの人にキスしろとまでは言ってねえよな?』
『な、おま、見てっ……!?』
『なあブレダ。どう考えても一番暴走したのコイツだろ?』
『ああ、うん、そうかもな。じゃ、俺は帰るわ』
『ちょっ、ブレダッ!?』
『――いいかオマエら。その件に関して金輪際俺を巻き込むなッ!!』
to be continued...?
探偵さんは考えすぎておかしな方向にぷっつんしてますけど、もうこれ落ちてますね。
らぶこめには程遠いですが、見たいと言ってくださった方へ*
「アイツをあそこまで追い詰めるなんて、さすが名探偵のロイ・マスタング様だな!」
「……逃げられたことに変わりはない」
「いやいやー、うちのお偉方が自分の手柄のように吹聴してたぜー。情けないが初めて何も盗られなかったわけだ。これでしばらくヤツも姿を見せないだろ」
久しぶりに愛する家族のもとに帰れると写真を取り出して笑う刑事の親友を呆れた目で見て、ロイは机に頬杖をついた。
机の上に置かれた新聞には一面に、「怪盗、初の失態!警察の面目躍如!?」と大衆を煽る安っぽい文字が躍っている。
彼の泥棒は狙う日と場所を予告するというフザけた真似をしてくるものの、盗むターゲットに関しては知らせてこない。
それくらい分かるだろうということなのか、単なる愉快犯なのか。
今回もある男爵の屋敷が狙われ、ターゲットを定めきれない警察は全面警備をするハメになっていた。
そこから独自にターゲットを導き出し、奪いに現れた泥棒と対峙し、追うことができたのは確かにロイの功績だったが――あの場は本当に、偶然が導いたものだったのかが未だロイの中で疑念として渦巻いている。
それもこれも、あの泥棒のせいだ。
――あとひとつ。ほしいものがあるんです。
思った途端、唐突に頭に響いた声に、びくりと震えた。
「――ロイ?どうした?」
「……え?」
「何か気になることでもあったか?」
――俺は、それがどうしてもほしい。
「……いいや」
「そうか?何かあったんじゃ――」
「別に」
「本当だな?」
「ああ。しつこいぞ、ヒューズ」
「だったらいいんだけどよ」
肩をすくめて引き下がった男の目の奥にはまだ伺うような光が残っていたが、ロイはそれを無視して頷いた。
嘘は言っていない。自分はどうしてか、相手の顔すら覚えていない。
ただ、ことあるごとに思い起こされるだけ。
「そうだ。だいたいあんな……っ」
「あんな?」
ヒューズの訝しそうな視線に、つい声を荒げそうになったことに気づいたロイは俯くことでそれを抑える。
だが、握った拳が震えるのを止められない。
あの泥棒あの泥棒あの泥棒――――!!
心の中で盛大に罵倒するのは追い詰めた自分にフザけたことを言ってフザけたことをしていった相手。
あんなに至近距離まで近づいたのに捕まえられず、あまつさえあんなことをこの私に――
怒りなのか羞恥なのか分からない感情でくらくらした。
俯いて両手を握り締めたままいる姿のロイに、ヒューズの鋭い視線が投げられていることにも気づかずに。
「なあロイ。オマエ、やっぱり何か――」
「……殺す……」
「は?」
「あの泥棒、絶対俺がとっ捕まえてブチ殺してやる……!」
「おーい、ロイさーん??口調変わってるぜー?」
――俺は、あんたがほしい。
本当に愛しい人へと向けられたような声と青い目だけが脳裏に焼きついていて離れず、ロイは唇を噛み締めた。
***
『――どうだった?』
『ああ、オマエにしちゃ上出来だ。あんなモンだろ』
『マジで?ああよかった……』
『んなこといって、ブレダが一番不安がってたろ』
『あのなジャクリーン、コイツに腹芸させるのがどんだけ難しいと思ってんだ?』
『だから最初からオレの方が適役だって言ったじゃねえか』
『オマエは暴走しすぎるからもっとダメだ』
『暴走?』
『……自覚ねえのかよ』
『まーまージャクもブレダも。いいだろ、うまくいったんだから。あの絵はあの場所が一番いいと思うし』
『オマエが言うな』
『まぁいい。で、こっから本題だけどな、ジャン』
『は?本題?』
『盗ってこなくていいとはオレもブレダも言ったが――誰も、あの人にキスしろとまでは言ってねえよな?』
『な、おま、見てっ……!?』
『なあブレダ。どう考えても一番暴走したのコイツだろ?』
『ああ、うん、そうかもな。じゃ、俺は帰るわ』
『ちょっ、ブレダッ!?』
『――いいかオマエら。その件に関して金輪際俺を巻き込むなッ!!』
to be continued...?
探偵さんは考えすぎておかしな方向にぷっつんしてますけど、もうこれ落ちてますね。
らぶこめには程遠いですが、見たいと言ってくださった方へ*
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