鋼の錬金術師テキストブログ。所謂「女性向け」という言葉をご存じない方、嫌悪感を持たれる方はご遠慮ください。現状ほぼ休止中。
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細い路地裏は、そこで行き止まりだった。
袋小路に追い詰め、逃げ道をふさいだロイは行き止まりに気づいてこちらを振り返る真っ黒な影をにらみつけた。
周囲は高い壁、乗り越えることも不可能だ。
「これでおまえも終わりだ、泥棒」
「……ありゃー」
能天気な声に一瞬毒気を抜かれそうになるが、散々世間を騒がせてきたコイツをようやくここまで追い詰めたのだ。絶対に逃がしはしない。思い直し、相手から目を離さず慎重に口を開く。
「観念してさっさと警察に――」
「いいっスよ」
「え?」
「あんたが捕まえてくれるなら。ロイ・マスタングさん?」
街灯の光で逆光になっていても、に、とその口元が挑戦的に笑うのが分かった。
名前を知られていたことと、その笑みに不意をつかれてカッとなる。
「っ!ふざけるな!」
「ふざけてませんよ、実際俺の仕事はこれで最後っスから。ああ、でも――」
影は自身が追い詰められている立場であることを理解していないかのようにのんびりと足を踏み出した。
カツ、と一歩。
ロイへと歩み寄る。
「あとひとつ。ほしいものがあるんです」
「……ほしいもの」
「ええ。俺はそれがどうしてもほしい」
なんなら、今まで盗んだものすべてと引き換えにしても構わないくらい。
「はっ、人のものを散々盗んでおいてよくもそんなことが――」
「――あれは、俺たちのものだ」
「……っ……!?」
瞬間、影の視線が鋭く、ガラリと気配を変えた。
低い声は、まるで凶暴な獣の唸り声のようでもあって。
圧倒される。
その、気配だけで。
「俺たちのものを取り返して、何が悪いんスか?」
「な…どういうこと――」
「いやー、ていうか今ほしいものって当初の目的にはぜんぜん入ってませんでしたからねえ。むしろ今が想定外っつーか、絶対あいつに怒られるっつーか」
カツリ。
問いただそうとする前に、たった今の出来事は幻だったかのように物騒な気配が霧散した。
そして、影は止まっていた歩みを再開させる。
ロイはその場から動かぬまま、くるくると変わる影の話にひっかかりを覚えて、眉をひそめた。
彼の言っていることが真実だとすれば――犯人は、複数犯。
ロイの知る限り、今まで今回の泥棒が複数であるといった話は出てきていない。
「……なぜ、私にそんなことを言う?」
「あんたはどう思います?」
疑問を疑問で返されて、一瞬考え込みそうになった己を叱咤する。
ヤツのペースにのせられてはならない。
惑わされるな。
首を振ってふたたび睨みつける。
「ほしいもの――と言ったな。狙いはなんだ?」
「あれ、名探偵のあんたでも分かりませんか?」
カツリ、カツリ。
クスリと笑って、どこまでもとぼけた態度を崩さぬ泥棒は歩みを止めず、ゆっくりと近寄ってくる。
闇に紛れるためか、影と思っていた部分は黒い装束で覆われていた。
ロイはまだ動かない。いや――動けないのか。
「まあそうっスよね……。俺も結構がんばってたんスけど、なかなかガードが固くて」
「だとしたら……この王室の秘宝か。それとも古代遺跡の宝物か……?」
カツリ、と足音が止まる。
目の前まで来られても、まだ、ロイは動けない。
だが、ここでみすみす逃すわけにはいかないのだ――強固な意志でもってきっと睨み上げた先には、さきほどの挑戦的な笑みとは違うやわらかな笑みと青い瞳が間近にあって、ふたたびロイの動きは停止する。
「そんな無粋なモンはいりません」
街を騒がせる泥棒は、立ちすくんだ探偵を引き寄せて堂々とその唇を奪うと、
「俺は、あんたがほしい」
歌うようにそう告げた。
泥棒っていうか怪盗みたくなっちゃった……。
兄弟で怪盗なハボ&ジャクと、探偵ロイな設定です。ジャクいないけど。
キャッツ●イ的な感じで!(古い?笑
title:Jazz Bug 10の不思議な人々
袋小路に追い詰め、逃げ道をふさいだロイは行き止まりに気づいてこちらを振り返る真っ黒な影をにらみつけた。
周囲は高い壁、乗り越えることも不可能だ。
「これでおまえも終わりだ、泥棒」
「……ありゃー」
能天気な声に一瞬毒気を抜かれそうになるが、散々世間を騒がせてきたコイツをようやくここまで追い詰めたのだ。絶対に逃がしはしない。思い直し、相手から目を離さず慎重に口を開く。
「観念してさっさと警察に――」
「いいっスよ」
「え?」
「あんたが捕まえてくれるなら。ロイ・マスタングさん?」
街灯の光で逆光になっていても、に、とその口元が挑戦的に笑うのが分かった。
名前を知られていたことと、その笑みに不意をつかれてカッとなる。
「っ!ふざけるな!」
「ふざけてませんよ、実際俺の仕事はこれで最後っスから。ああ、でも――」
影は自身が追い詰められている立場であることを理解していないかのようにのんびりと足を踏み出した。
カツ、と一歩。
ロイへと歩み寄る。
「あとひとつ。ほしいものがあるんです」
「……ほしいもの」
「ええ。俺はそれがどうしてもほしい」
なんなら、今まで盗んだものすべてと引き換えにしても構わないくらい。
「はっ、人のものを散々盗んでおいてよくもそんなことが――」
「――あれは、俺たちのものだ」
「……っ……!?」
瞬間、影の視線が鋭く、ガラリと気配を変えた。
低い声は、まるで凶暴な獣の唸り声のようでもあって。
圧倒される。
その、気配だけで。
「俺たちのものを取り返して、何が悪いんスか?」
「な…どういうこと――」
「いやー、ていうか今ほしいものって当初の目的にはぜんぜん入ってませんでしたからねえ。むしろ今が想定外っつーか、絶対あいつに怒られるっつーか」
カツリ。
問いただそうとする前に、たった今の出来事は幻だったかのように物騒な気配が霧散した。
そして、影は止まっていた歩みを再開させる。
ロイはその場から動かぬまま、くるくると変わる影の話にひっかかりを覚えて、眉をひそめた。
彼の言っていることが真実だとすれば――犯人は、複数犯。
ロイの知る限り、今まで今回の泥棒が複数であるといった話は出てきていない。
「……なぜ、私にそんなことを言う?」
「あんたはどう思います?」
疑問を疑問で返されて、一瞬考え込みそうになった己を叱咤する。
ヤツのペースにのせられてはならない。
惑わされるな。
首を振ってふたたび睨みつける。
「ほしいもの――と言ったな。狙いはなんだ?」
「あれ、名探偵のあんたでも分かりませんか?」
カツリ、カツリ。
クスリと笑って、どこまでもとぼけた態度を崩さぬ泥棒は歩みを止めず、ゆっくりと近寄ってくる。
闇に紛れるためか、影と思っていた部分は黒い装束で覆われていた。
ロイはまだ動かない。いや――動けないのか。
「まあそうっスよね……。俺も結構がんばってたんスけど、なかなかガードが固くて」
「だとしたら……この王室の秘宝か。それとも古代遺跡の宝物か……?」
カツリ、と足音が止まる。
目の前まで来られても、まだ、ロイは動けない。
だが、ここでみすみす逃すわけにはいかないのだ――強固な意志でもってきっと睨み上げた先には、さきほどの挑戦的な笑みとは違うやわらかな笑みと青い瞳が間近にあって、ふたたびロイの動きは停止する。
「そんな無粋なモンはいりません」
街を騒がせる泥棒は、立ちすくんだ探偵を引き寄せて堂々とその唇を奪うと、
「俺は、あんたがほしい」
歌うようにそう告げた。
泥棒っていうか怪盗みたくなっちゃった……。
兄弟で怪盗なハボ&ジャクと、探偵ロイな設定です。ジャクいないけど。
キャッツ●イ的な感じで!(古い?笑
title:Jazz Bug 10の不思議な人々
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