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鋼の錬金術師テキストブログ。所謂「女性向け」という言葉をご存じない方、嫌悪感を持たれる方はご遠慮ください。現状ほぼ休止中。
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「よっし、終わった!!ロマーリオ!」

執務室の机で書類に囲まれていたディーノは、手足を投げ出して叫んだ。
動きが乱暴だったせいで多少書類が飛び散ったが、そんなものあとで拾えばいい。タイムリミット5分前に仕事を完遂した喜びに水を差したくはない。
名を呼ばれた部下は、仕方ねえなというように肩をすくめて出て行く。そのあとを追うようにディーノも執務室を出て自分の部屋で準備をし、玄関へと急いだ。途中何度か転んだが、仕事終わりと徹夜明けのハイテンションもあいまって気にもならない。

「お、ボス、お出かけか?」
「ああ、ちょっと行ってくる!」
「荷物持ったか?」
「おう!」
「忘れもんねえかー」
「ねえって!エンツィオもいる!」

いつまでも子ども扱いする部下たちに叫び返して、乗り込んだ車に落ち着くと、ディーノはわくわくといった様子で携帯をとりだして、電話をかけた。少しのコール音のあと、ぷつ、と電話の向こうの相手が出る音がする。

『もしもし』
「もしもし恭弥か!?」

ぶち。

ツー、ツーと虚しい音を耳に、ディーノはふるふると震えた。
前の座席でハンドルを握る側近が、バックミラー越しのボスの様子に不審そうに問いかける。

「どうしたー?ボス」
「アイツ、速攻切りやがった……!」
「おお」

さすが恭弥、容赦ねえなー、と言う部下を無視してリダイヤルを押す。ここで諦めるようでは恭弥の師匠などやっていられない。しつこい男上等だ。
さきほどより長いコール音の後、ふたたび海の向こうとつながったと分かるノイズが聞こえた。

「恭弥!」
『……しつこいよ、あなた』
「おまえが一瞬で切るからだろ!?」

ひでえと訴えるが、雲雀には右から左のようで、まったく気にした様子もない。

『で、何なの』
「そう、俺の仕事が終わったんだ!」
『…………』
「だーーっ!!待て待て切るな!!」

馬鹿にしたような溜め息とともに携帯を離す気配に慌てて叫ぶ。

『何。僕はあなたと違って忙しいんだよ』
「俺だって忙しかったっつーの」
『そう。で?』

冷たい。くじけそうになりながら、それでもディーノは用件を伝えた。

「……仕事が終わって、休みになったから電話したんだよ」
『――ワオ』

初めて嬉しそうな声が聞こえて、くじけそうになっていたのが復活する。現金なものである。
戦いたいから、という物騒な理由は置いておいて、会えることをよろこんでもらえるのは単純に嬉しいのだ。

『どのくらいなの』
「んー…そうだな、一週間くらいかな」
『ふうん』

興味なさそうにしつつも、口元が緩んでいるような気配を感じて、そわそわした。
きっと今は満足そうな顔をしているんだろう。いや、逆に戦いに飢えた顔かもしれない。
そう思ったらますます逢って確かめたくなって、ディーノは逸る気持ちを押さえつけるのに必死になった。

『それで、今どこ』
「へ?今?あーロマ、今どこだ?」
「もう空港に着くぜ」
『……空港?』
「おう。終わってすぐ車走らせて来てんだ」
『…………』
「日本には多分明日の……いや、今の時間からだったら――」
『ねえ』
「ん?」
『わざわざそんなところから電話してこないで』

ぶち。

二度目の通話も、5分もかからなかった。
さすがに二度目の通話終了を表示するディスプレイにしばし呆然とするも、ディーノは次の瞬間むきになったように電話をかけなおしはじめる。が、いくらやってもつながらない。
「お客様のおかけになった……」と電源の入っていないアナウンスが流れるに至って、ようやくディーノも諦めた。

「ひでえ……」

しおしおとうなだれるディーノに、ロマーリオが苦笑する。

「まあまあボス。あんまりしつこいと捨てられるぜ」
「うるせえ。おまえも冷たいって思うだろ?」

俺は早く恭弥に会いたいんだっての、と、ここが車の中でなかったら座り込んで地面をつつきはじめそうなボスの姿を見て部下の苦笑がさらに深まる。
しょげているボスを見ているのも面白いが、このままだと機内の仕事にも差し障りが出てくる。
そんな計算も片隅におきつつ、なんだかんだ言って結局ボスには甘いキャバッローネの中枢を担う部下はのんびりとした口調で言った。

「なあボス。恭弥はわざわざイタリアから電話してくんなつったんだろ」
「それがなんだよ」
「さっさと並盛に着いて、出直して来いってことじゃねーのか?」

言った瞬間のディーノの変化は劇的だった。
驚きに目を見開いてから、前のめりになって部下に叫ぶ。

「ロマーリオ!もっと飛ばせ!!」
「かまわねえがボス、飛行機の離陸時間ははやまんねえぜ?」
「そっちも飛ばす!」

無茶を叫んで後ろからシートを揺らす。
運転席をがたがたと揺らされながら、ボスにゃあちっと刺激が強すぎたか、と心のうちでつぶやいて、腹心の部下はアクセルを踏み込んだ。




ディ…ディノさん可愛らしすぎたでしょうかね……?
カップルなのか仲のよすぎる師弟なのか微妙なライン。
ちなみに雲雀が一回目切ったのは、ディノさんからの電話だと思ってなくてびっくりして思わず切っちゃったという。
それでこれ以降ディノさんは不意打ちで来るようになります(笑)
タイトルはいつものごとくbe in love with flowerさまから。
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管理人 柚 (雑記)

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